「聞く」と「聴く」の使い分けは、受け手の意識の差に基づきます。
「聞く」について
音や声が偶然耳に入る状況を指します。例えば、「外の物音が聞こえる」や「誰かの話し声が聞こえる」など、自然に周りの音を受け取る場合に用います。
また従うや受け入れるといった意味合いも持ち合わせています。「指示に従う」「アドバイスを受け入れる」といった文脈で使われることがあります。
聞くの例文
・昨日の夜、隣の部屋から大きな話し声が聞こえた。
「聴く」について
より意識的に、特定の音や情報に注意を向ける行為を表します。
これには「音楽をじっくり聴く」や「講演を注意深く聴く」、「世間の意見を聴取する」といった状況が含まれます。
「国民の意見を聴く」は、意見に耳を傾ける意味になり、従うというニュアンスは含まれません。
聴くの例文
・彼は新しいアルバムをじっくり聴いて、その音楽性を深く理解しようとした。
「訊く」について
問いかける、情報を求めるという意味で、「道を尋ねる」や「具体的な事情を問い詰める」などの文脈で使います。
公式文書などでは、この用法は少なく、「聞く」が一般的に用いられます。「訊かれる」はありますが、「訊こえる」という表現は使われません。
訊くの例文
・彼女は道に迷ったので、最寄りの駅への行き方を通行人に訊いた。
特定の複合語では、「聞く」が使われることが多く、「聞き惚れる」「聞き耳を立てる」などがその例です。
また、「聞こえる」は基本的に「聞く」に関連する形ですが、音楽などが自然に心に響くような場合は「聴こえる」と表現することもあります。
さらに、「聞く」は感覚や感じ取るという意味でも使用され、「香りを感じ取る」や「酒の品質を判断する」といった文脈で「香を聞く」「酒を聞く」と表現されることがあります。酒の味を評価する「利き酒」は、「聞き酒」とも書かれることがありますが、一般的には「利き酒」と表記されることが多いです。