「振り返る」という行為に対して、「顧みる」と「省みる」という二つの表現があります。
もともと、振り返って何かを見るという直接的な行為から転じて、過去に思いを馳せたり、自己反省をするといった意味合いを持つようになりました。こ
れらは意味の違いに応じて使い分けられます。
「顧みる」について
「顧みる」は、文字通りに振り返って見ること、または過去を懐かしむ、思い出すという意味で使われることが多いです。
さらに、何かを心配する、気にかけるという意味でも用いられます。「顧問」や「顧客」という言葉にそのニュアンスが見て取れます。
顧みるの例文
・彼は忙しい日々の中でも、常に家族を顧みる時間を大切にしている。
・歴史を顧みることで、将来についての洞察を深めることができる。
・成功の影には、顧みられないほどの努力と犠牲があるものだ。
「省みる」について
自分の行動を振り返って、その中に問題点がなかったかを考える、つまり反省する意味で使われます。
これは「反省」や「内省」といった文脈で登場します。
省みるの例文
・今日の失敗を省みて、明日への教訓としたい。
・自分の言動を省みることは、成長する上で非常に重要だ。
・社会人としての責任を省みず、軽率な行動を取ってしまった。
一般的には、「顧みる」が広く用いられ、「省みる」は反省する際に使うと覚えておくといいでしょう。
しかし、文脈によってはどちらを用いるべきか迷う場合もあり、注意が必要です。
例えば、「危険を恐れず」「迷惑を顧みず」といった表現は、直感的には反省の意味で捉えがちですが、実際には恐れない、気にしないという意味合いで、「顧みる」が適切です。
さらに、「人生を振り返る」「部下の失敗について考える」などの表現は、「顧みる」と「省みる」のどちらを用いても間違いではないですが、意味のニュアンスが変わってきます。
例えば、「人生を振り返る」は、過去を懐かしむ意味合いがあり、一方で反省の意味を含めたい場合は「省みる」を用います。
同様に、「部下の失敗について考える」場合、心配する意味で「顧みる」、原因を自分に求め反省する意味で「省みる」を選択します。